ゆっくりとしたテンポで、しみじみと心の底から歌う佳曲。曲の最後に低音が深淵に降りていくところ（歌の終わりと後奏）は、「歌にひそむ深い悲しみ」を音にして表しているのでしょう。

Ich kann wohl manchmal singen,

時には　まるで楽しいかのように

Als ob ich fröhlich sei,

歌をうたうことだってできる

Doch heimlich Tränen dringen,

そうすると　ひそかな涙があふれ

Da wird das Herz mir frei.

心が解き放たれるのだ

Es lassen Nachtigallen,

夜鶯が

Spielt draußen Frühlingsluft,

春の空気にあそび

Der Sehnsucht Lied erschallen

そのあこがれの歌が

Aus ihres Kerkers Gruft.

地下の牢屋から　湧きあがる

Da lauschen alle Herzen,

みんな　心から歌に耳をかたむけ

Und alles ist erfreut,

すべては　喜ばしい

Doch keiner fühlt die Schmerzen,

だが　誰ひとり　この歌にこめられた

Im Lied das tiefe Leid.

痛みと苦しみに　気づかない

(Joseph von Eichendorff)

（ヨーゼフ・フォン・アイヒェンドルフ、対訳：山枡信明）